遺贈寄付とは、自身が亡くなった後に、財産を遺言によって特定の団体や個人に寄付することです。
未来の世代がより良い生活を送れるよう大きく貢献することにつながります。
特に日本においてはまだあまり一般的ではありませんが、意義や方法について理解を深めることで、多くの人々がメリットを享受できるでしょう。
今回は遺贈寄付の方法や注意点について解説します。
自身の財産を後世の世代のために有効活用したいとお考えの方は、ぜひ参考にしてください。
遺贈寄付とは?
遺贈寄付とは、自分の財産を遺言によって特定の団体や個人に寄付することを指します。
自分が亡くなった後に、財産を社会貢献や慈善活動に役立てたいと考えた際に最も有効な手段といえるでしょう。
たとえば、環境保護団体、医療研究機関、教育機関など、自分が共感できる団体や共通の目的を持つ団体へ財産を寄付することで、未来の世代に貢献できます。
また日本では、遺贈寄付に対して一定の税制優遇措置が設けられており、具体的には相続税の軽減が受けられたり、遺族が負担する税金を減らしたりできます。
さらに遺贈寄付は、遺族が遺産分割について争うリスクを減らすことにもつながります。
遺言書に具体的な寄付先や金額を明記すれば、遺族間でのトラブルを避けられるでしょう。
また遺言を残す最も一般的な方法は「遺言書」の作成です。
遺言書には、自分の財産をどの団体や個人にどのように寄付するかを明確に記載します。
そして事前に情報収集をしたうえで、信頼できる寄付先の団体を選定します。
遺言書の作成や税制優遇措置については、弁護士や税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
専門家のアドバイスを受ければ、法的なトラブルを避け、スムーズに遺贈寄付が行えるでしょう。
遺贈寄付を行う方法
遺言といえば遺言書を作成する方法が最もよく知られていますが、寄付する財産の種類や公的サービスを利用して行う方法もあります。
その方法を利用する際にも、弁護士や税理士など法的な専門家に相談することをおすすめします。
遺言書で寄付する方法
遺言書を作成して寄付を行います。
また遺言書を作成するためには、下記のように3つの方法があります。
〇 自筆証書遺言
本人が全文を手書きし、署名・押印する形式です。手軽に作成できますが、法的要件を満たさないと無効になるリスクがあります。
〇 公正証書遺言
公証人が作成し、公証役場で保管される形式です。法的に最も確実で、紛失や改ざんのリスクが少ないです。
〇 秘密証書遺言
内容を秘密にしたまま公証人に提出する形式です。本人以外に内容を知られることなく、安全に保管されます。
遺言書には、寄付する財産の具体的な内容や金額、寄付先の名称と所在地を明記します。
たとえば、「私の全財産の30%をA団体へに寄付する」など具体的な記載が必要です。
また遺言執行者(遺言に基づいて手続きを行う人)を指定しておくと、手続きがスムーズに進みます。
保険や信託などの契約を利用して寄付する方法
近年、社会貢献や慈善活動に対する関心が高まっている背景から、保険や信託を活用して、より計画的かつ効果的に寄付できるようになりました。
保険や信託を利用して寄付を行う方法は、主に以下の3つがあります。
〇 生命保険の受取人を慈善団体に指定する
生命保険契約の受取人として団体を指定することで、契約者が亡くなった際に保険金が対象の団体へ支払われます。自分が生きている間は資産を保持しつつ、亡くなった後に社会貢献を果たせるという2つのメリットがあります。
〇 保険金の一部を寄付する
生命保険契約の一部のみを団体に寄付できます。たとえば、総保険金額の10%を慈善団体に寄付し、残りは家族に渡すという使い方も可能です。自分の家族への助けと社会貢献が両立できます。
〇 チャリタブル・リード・トラスト(Charitable Lead Trust, CLT)を行う
所持している株式を信託化し、信託から団体へ定期的に寄付できます。さらに自身が亡くなった後も、残余額が団体へ寄付されます。なお信託後の変更は不可となるため、制度を利用する際は慎重な判断が必要です。ただし自分や家族が生きている間は収益を受け取りつつ、亡くなった後も社会貢献ができます。
遺言で寄付を行う手順
自身の財産を寄付したいと思い立ったら、少しずつ準備を進めましょう。
遺言で寄付を行う手順を解説します。
なお不明点があれば、弁護士や税理士など専門知識を持った人へ積極的に相談することをおすすめします。
遺贈先を選定する
財産を寄付する遺贈先を決めます。
遺贈先を決める際には下記のポイントを踏まえて見極めるとよいでしょう。
〇 自分の願いを明確にする
自分が理想とする世界観や信念を明確にし、自分と同じ価値観が大きく反映されている団体を選びましょう。
〇 団体の信頼性を確認する
自身の財産が正しく使われるには、信頼できる団体に寄付する必要があります。信頼できる団体は、下記の要素を満たしている場合がほとんど。できれば、一度でも団体の活動に参加することをおすすめします。
― 理念を持って活動している
― 公式サイトがあり、積極的に情報発信を行っている
― 活動実績を定期的に報告している
― 寄付先や金額を明確に提示している
〇 家族へ遺贈と遺贈先について共有する
遺贈先を決める際には、家族とのコミュニケーションも重要です。財産の分配が複雑になる場合や、特定の人に多くの財産を遺贈する場合は、遺族と事前に話し合っておくことで後々のトラブルが避けられます。また遺贈先の団体が信頼できるかどうか、第三者からの意見を聞くことも大切です。
遺言書を作成する
遺贈先を決めたら遺言書を作成しましょう。
遺言書は、遺贈を行うための公式な文書であり、法律で定められた形式に従って作成しなければなりません。
前述したとおり、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」から自身にとって最適な方法を選びます。
また、遺贈する財産を特定します。
物品、不動産、金融資産などが含まれ、財産の詳細を明確に記載し、寄付先の団体名と寄付をする金品について明確に記載します。
さらに遺言書が法律的に有効であるか、以下の要件を満たしているか確認しましょう
・遺言者は成年である
・第三者から見て遺言者が正常な判断能力を持っていることがわかる
・自筆証書遺言以外の場合、証人がいる
作成した遺言書は、安全な場所に保管します。
公正証書遺言の場合は公証役場で保管されますが、自筆証書遺言の場合は信頼できる場所に保管し、家族や信頼できる人にその所在を知らせておきましょう。
遺言執行者を決める
遺言書による寄付は、自身が亡くなった後、記載された内容通りに執行してくれる「遺言執行者」を決めておくとスムーズです。
遺言執行者は下記に当てはまる人物から選任するとよいでしょう。
・高い信頼性がある
・ある程度の法的な知識がある
・公平性が高い
・実行力と責任感が強い
・心身ともに余裕が感じられる
また人生において状況や財産状況が変わることもあるでしょう。
そのため定期的に遺言書を見直し、必要に応じて更新が必要です。
新たな財産が増えたり、受取人が変更になったりした場合には、都度遺言書を修正しましょう。
遺言で寄付を行う際の注意点
遺贈は金品のやり取りであり、かつ本人が亡くなった後に行われることから、把握しておくべき注意点があります。
場合によっては寄付先が多額の税金を負担したり遺族に迷惑をかけたりする場合にもつながるため、最終的には法の専門家に相談すると安心です。
遺贈の種類によっては相手に負担が発生することも!
遺贈は、誰が・どこに(誰に)・いくら遺贈するか?により発生する税金や負担が異なります。
そのため自身が行おうとしている遺贈により、相手に意図しない負担が発生しないよう注意が必要です。
たとえば個人が法人へ遺贈する場合、相手には「法人税」と「みなし譲渡所得課税」が発生します。
また遺贈の種類の中に「負担付遺贈」があります。
負担付遺贈とは、財産を受け取った人(団体)が、受け取る代わりに何らかの義務や負担を負うことです。
たとえば、「私の財産を団体Aへ遺贈する。ただし、Aは毎年B施設に一定額の寄付や金銭的援助を行うこと」という指示を出します。
この場合、団体Aは財産を受け取る代わりに特定の義務を果たさなければなりません。
また果たされない場合、B施設は家庭裁判所へ申し立てをし、遺言の取り消しが請求できます。
団体によっては、財産を受け取ったとたん責務を負わなくなる可能性もあるでしょう。
不適切な財産の使用を防ぐためにも、負担付遺贈を選択する方法は大変有効です。
ただし、遺贈に関わる全ての団体からの合意が必要で、意図しない負担やトラブルを避ける必要があります。
遺留分を考慮する
遺贈を行う際、「遺留分」という概念を無視することはできません。
遺留分とは、法定相続人が最低限受け取ることが保証されている相続分のことです。
日本の民法では、特定の相続人(配偶者、子、直系尊属)に対して遺留分が認められています。
つまり遺留分には、遺言者が全財産を第三者に遺贈することを防ぎ、法定相続人の権利を保護する役割があります。
遺贈を行う際は、遺留分を侵害しないように注意が必要です。
もし遺留分が侵害された場合は、遺留分権利者は「遺留分減殺請求」が行え、侵害された遺留分が取り戻せます。
全財産を第三者に遺贈した場合でも、法定相続人が遺留分減殺請求を行えば、一部を取り戻すことが可能です。
遺贈先と遺族間でトラブルが起きないよう、遺言書を作成する際には、遺留分を考慮したうえでの配分が重要です。
遺贈の際に発生する税金
遺贈の際に、かかわる税金について把握しておきましょう。
また遺贈する際、できるだけ相手に負担が発生しないよう考慮することが大切ですが、やむを得ない場合は相手へどの税金がどれくらいかかるかを伝えておくと親切です。
〇 相続税
遺贈により財産を受け取った側には、相続した金額に応じて相続税が発生します。しかし国・地方公共団体・法人へ遺贈した場合、受け取った団体には原則、相続税が発生しません。
〇 法人税
企業や法人が得た利益に対して課される税金のことです。個人が所得税を支払うのと同様に、企業も収益に応じて税金を支払います。個人が普通法人へ遺贈した場合、金額に応じて法人税が発生します。
〇 みなし譲渡課税
不動産や株式など含み益があるものが遺贈された場合、遺贈を受けた側は、確定申告において含み益に対する課税を申告します。含み益に対する税金を「みなし譲渡課税」といい、申告方法や負担する側について、あらかじめ双方で取り決めをしておくと安心です。
〇 登録免許税
不動産の登記や会社の設立など、特定の法律行為を行う際に国に納める税金です。具体的には、土地や建物の所有権移転登記などが該当します。不動産を団体へ遺贈した場合、受け取った側に発生します。
遺贈できる団体とは?
遺贈を受け付けている団体には、主に慈善団体やNPO法人、また教育機関などが含まれます。
遺贈先の選定で迷われた際には、まず団体の種類から絞ってはいかがでしょうか?
〇 慈善団体・NPO法人
慈善団体や非営利組織(NPO)は、社会問題の解決や地域社会の発展を目的としています。これらの団体は、貧困救済、教育支援、環境保護など多岐にわたる活動を行っています。
(具体例)
― 国際連合児童基金(ユニセフ)
― WWFジャパン(世界自然保護基金)
〇 教育機関
教育機関への遺贈は、未来の世代に向けた投資となります。奨学金制度の充実や施設の整備に役立てられることが多いです。
(具体例)
― 大学や専門学校
― 乳児院や児童養護施設
― 子ども食堂・子ども食堂の支援団体
― 教育財団
まとめ
遺贈寄付は、自分の財産を未来のために役立てる素晴らしい方法です。
また団体に対してだけでなく、社会貢献や税制優遇、遺族への負担軽減など、多くのメリットがあります。
遺言書を作成し、信頼できる寄付先を選び、専門家のアドバイスを受けることで安心して遺贈ができます。
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